小児科|千葉県いすみ市|外房こどもクリニック




トップページ  >>  医療従事者の皆様へ  >>  追悼:NPO法人千葉こどもサポートネット理事長・池口紀夫氏

医療従事者の皆様へ

追悼:NPO法人千葉こどもサポートネット理事長・池口紀夫氏

2015/05/11

 福祉と医療は近くて遠い。
 両者の領域は重なる、対象も重なる、しかし共同作業はしばしば困難である。まず、お互いに言葉が通じない。対象者の捉え方、支援の目標とするところも何となく異なる。そしてお互いに行き違いがある。そういう時に、両者を橋渡しできる人材が必要となる。両者を理解して、それぞれの文法の相違を分かった上で翻訳し、共同作業の司会をできる人材が。
 池口紀夫さんはまさしくそうした人物だった。私がこの土地で小児科の臨床を始めたちょうど同じ頃から、千葉県中核地域生活支援センター夷隅ひなたの所長を務めていらした。障害、虐待、保育困難など小児医療と関連し、行政や福祉へつなげなければならない事例を数多く担っていただいた。また、福祉行政に関連して何度か共に役所に足を運び、事業所を訪れた。当院でクリニック職員対象に講義をしていただいたこともあり、支援に関わる関係者会議を開くときにはまず中心となっていただいた。
 福祉の支援が必要なとき、当事者はどうしてよいか分からない。役所の窓口へ行っても、窓口の担当者だって全体を見渡してその当事者に今、何が必要であるかを必ずしも的確に助言できるわけではない。全体を見渡して、行政・福祉・医療の領域を横断した支援のプランを描けるのが優れたコーディネータである。池口さんは縦横無尽にそうした仕事をこなしていた。
 池口さんはなぜ異なる領域をまたいで通訳やコーディネートの仕事がおできになったのか。個人的な推測だが、福祉に軸足を置きながら、池口さんご自身が、教育や文化活動など異領域にわたる関心や人脈を持ち続けたからではないだろうか。
 誠実、まっすぐな性格、妥協をしない仕事ぶり、告別式でもそうしたエピソードを幾人もの方からうかがった。まだ、これからいくつかの共同作業を持ちかけてみたいと思っていた。その矢先に急逝されてしまった。残念でならない。
 急にいなくなってしまうと、却って、そばにいるような気もする。何気なく訪ねてくるのではないか。そばにいて話しかけてくるのではないかという気がしてくる。そうした日はもう来ないことが現実であるが、あの鋭い、しかし優しい顔貌が目に浮かぶ。

合掌。

2015年5月6日記

 

 
 池口紀夫氏は、2005年から千葉県中核地域生活支援センター夷隅ひなた所長をお務めになり、退任後はNPO法人千葉こどもサポートネット理事長をお務めになっていました。

2015年4月30日にご自宅にて急逝され、5月4日にいすみ市天徳寺で告別式が行われました。

5.png